第11章 夢と現実 壱
皆がいる車輌を出たのはいいものの、2両ほど渡り歩いているが売り子の姿が見えず更紗は戸惑っていた。
鬼が出る可能性を考えると早く戻らなければならないのに、このまま戻るのも気が引けて戻れずにいる。
(とりあえず先頭車両まで行ってみましょう。日輪刀もありますし、何か起こっても時間稼ぎくらいは出来るはずです)
更紗は羽織の中に忍ばせている日輪刀の存在を確かめて次の車輌へと続く妻引戸を2つ開いて前へと移動を開始する。
しかし先に進むにつれて人が少なくなっている事に気が付き警戒を強めた。
それは車輌を進むごとに顕著となり前から2両目では人の姿は数人しか見当たらない。
明らかな異変に1番手前に腰掛けている人に話し掛けようと近付くと小さな寝息が聞こえた。
「眠ってる?……あちらの方は?!」
更紗は車輌にいる人、一人一人確認するがやはり全員が眠りに落ちていた。
申し訳ないと思いつつも空き箱を誰もいない席に置き、眠っている人の肩を叩いたり揺らしてみるも全く起きる気配がない。
「……血鬼術でしょうか?ここにいないという事は、次の車輌」
残る車輌はあと1つ、先頭車両だけだ。