第11章 夢と現実 壱
「師範も善逸さんたちもいらっしゃるので大丈夫ですよ。それに、禰豆子さんもいますもんね」
更紗は立ち上がって炭治郎の背に背負われている木箱を軽くコンコンと叩くと、まるで返事をするかのように爪でカリカリと内側から蓋を引っ掻く音が聞こえた。
「ふむ、竈門妹からもやる気が伺えるな!頼もしい限りだ!」
そう言って杏寿郎も更紗と同じように木箱を叩き、挨拶をしているようだ。
そんな遣り取りを微笑ましく見ていたが、更紗の視界に弁当の空き箱と立ちっぱなしの炭治郎たちの姿が入り、慌てて空き箱をかかえだした。
「立たせたままでしたね、私はこの箱を捨ててまいりますので、どうぞこちらにお座り下さい。積もるお話しもあるでしょうし」
更紗が杏寿郎に視線を向けると、穏やかな笑みを浮かべて頷いてくれる。
「ありがとう、更紗。だが1人だと大変だろうから、俺も共に行く」
「いえ!こうして潰せば大丈夫ですよ。すぐに戻りますので、そのまま皆さんとお話しをしていてください」
その言葉に杏寿郎は上げかけていた腰を椅子へと戻し、炭治郎と善逸は弁当の空き箱の数に目を剥いていた。
「それ、煉獄さんが1人で食べたんですか?」
「ん?いや、更紗と半分ずつだが?」
伊之助と禰豆子以外の絶叫を聞きながら、更紗は箱を潰して苦笑いをしながら車輌を後にした。