第10章 裁判と約束
当の本人がこうもケロッとしてるにもかかわらず、周りの3人の漂わせる空気は重く沈んでいる。
「あの!私も泣きそうなほど憤りは感じています!でも、前に杏寿郎君には言いましたが、私は将来、あの時に泣いてばかりでなく笑っていてよかったと思いたいです。泣いても笑っても時間は平等に過ぎ去って、全て思い出になります」
なかなか沈んだ空気が解消されず、更紗は悩みながらも先を続けることにした。
「だから、この事で悲しい顔をしないでください。笑顔でいてください、私は皆さんと笑顔で過ごす思い出を重ねたいなぁ……と勝手なお願いです」
まるで葬儀のような空気に更紗の言葉は尻すぼみとなり、最後の方は静かな部屋だからこそようやく伝わる声音にまでなってしまった。
そんな中、1番に動いたのはやはり杏寿郎だった。
椅子に座っている更紗を両腕で天井へ向かって抱え上げると、自身の炎を模した羽織りが羽根のようにフワリと舞い、更紗の顔が笑みで満たされていく。
「更紗は羽根のように軽いが、心は熱く鋼のような強さだな!君がそう望むなら俺は笑顔でいる。共に明るい思い出を作っていくぞ!」
「鋼?!……頑固なのは鋼が心の中にあるからかも知れませんね。フフッ、明るくて楽しい思い出、たくさん作りましょうね」