第10章 裁判と約束
「ちょっと待ってください!被験体になるという事は体に傷を作らなくてはいけませんし、命の保証もありません!そんな簡単に……」
今にも涙を零しそうなほど瞳を潤ませる更紗に笑顔を向け、安心させるようにその震える手を強く握った。
「簡単になど決断していない。傷の事をいうならば、それは更紗も同じであるし、命に関しては君の方が危険が多いんだ。それに胡蝶には有事の際に備えて控えていてもらうべきだ。俺は胡蝶を信じている!更紗も胡蝶を信じろ!」
杏寿郎の大きな声も、今のしのぶにとっては更紗の決断を促すものになり得るのでありがたいと共に、同じ柱として絶対の信頼を置いてくれているのだと確信できる言葉で嬉しいものだった。
そして更紗もようやく意を決したのか、杏寿郎の手を握り返して2人に向かって頭を下げた。
「出来る限り力を制御するよう努力いたします。私にお2人の体と知識をお貸しください!」
杏寿郎としのぶは顔を見合わせ、更紗に向き直ると大きく頷いた。