第10章 裁判と約束
「それもあるが、俺自身も鬼の少女に興味があったのだ。まだ更紗のように心から竈門妹を信じられたわけではないが、今日会えてよかった……とは思っている」
自分の気持ちを考えてくれていたことを嬉しく思い、自然と胸にうずめた更紗の顔に笑みが浮かぶ。
そして先ほど禰豆子を抱きかかえる様子をずっと見ていた更紗は、杏寿郎の禰豆子に対しての感情にいいものが増えたのではないかと感じていた。
もし同じ家で過ごす事になるのであれば、小さな変化であっても馬鹿には出来ない。
「そうですね。私も今日禰豆子さんにお会い出来てよかったと思います」
互いに顔を見合わせて笑ったところで、部屋の戸が開き眩しい光が差し込んできた。
「こちらにいらしたのですね。お待たせしてすみません、さぁ、早速ですが本題に入りたいので、一緒に診察室に移動しましょう」
しのぶが本部から帰還し、探しに来てくれたようだ。
だがいつもより早口でピリピリした雰囲気がでているのは、やはり預かってあるとは言え鬼の存在が緊張を高めているのだろう。
それは今この場で触れてはいけない事だと2人とも感じ取り、素直にしのぶの言葉に従い診察室へと足を動かした。