第10章 裁判と約束
「ん?むーー!!」
禰豆子は更紗を覚えていたのか、嬉しそうに頬を紅潮させながら胸の中に飛び込んでいった。
「まぁ!杏寿郎君、すごく可愛らしいです!フフッ、こんな可愛い妹が私にいたら存分に甘やかしてしまいそうです!」
徐々に体の大きさを小さくする禰豆子とそれを抱きしめる更紗は見た目は違えど、杏寿郎には仲のいい姉妹のように映った。
「更紗が甘やかすと甘々すぎて我儘な妹になりそうだがな!ふむ……確かに可愛らしい、かもしれん」
鬼は人を喰うものだという固定概念が杏寿郎の心の奥底にはあるが、あまりにも無害としか見えない禰豆子の姿に思わず警戒心が緩まり、頭を再度優しく撫でる。
すると初めはキョトンと杏寿郎を見つめていた禰豆子だったが、次第に気持ちよさげに目を細め、鋭い爪をもつ小さな手を伸ばしてきた。
「あら、禰豆子さん杏寿郎君に抱っこしてほしいのですか?」
「む!むーー!」
そうだというように腕を精一杯伸ばし、大きな瞳で杏寿郎を見つめる。
「だ、抱っこか?!む……少しだけだぞ」
杏寿郎は禰豆子の脇に手を入れ、更紗の胸元から自分の胸元へと移動させてやった。