第10章 裁判と約束
炭治郎からすれば、杏寿郎は兄妹共々斬首が相応しいと判断を下した人物だ。
安易に教えてはもらえないかもしれないと案じたが、それは杞憂に終わった。
「わぁ!きっと禰豆子も喜びます!ぜひ会いに行ってやってください!よければ俺が案内しますよ!」
まさかの大歓迎だった。
あまりに眩しい笑顔なので、杏寿郎は疑問を投げかけた。
「竈門少年は俺に教えることに抵抗はないのか?腰に日輪刀を差してる柱だぞ?」
「さっきも言いましたが、俺は鼻が利きます。煉獄さんは禰豆子に害意がないって分かるんです。興味深々って匂いはしますけど」
杏寿郎の禰豆子に対しての興味を知って尚、明るい笑みで顔を満たす炭治郎に杏寿郎は苦笑いを受かべた。
「大したものだな。しかし君は怪我をしているのだから、部屋だけ教えてもらえれば更紗と向かう。ゆっくりと体を休めていなさい」
初めて見る杏寿郎の穏やかな笑みに、炭治郎も先ほどの笑みのまま頷いて応え、禰豆子の部屋の場所を伝えた。
そうして杏寿郎は禰豆子の部屋へ向かうため、未だに善逸を宥めている更紗の肩を抱き寄せ、出入り口へ向かう。
「竈門少年、黄色い少年、猪頭少年。邪魔をしたな!見舞いの品は遠慮なく食べてくれ!それから、君たちの力や想いを俺はかっている!ここでの訓練が終わった暁には継子にと思っているので、また改めて伺う!考えていてくれ!」
3人にとってまさかの言葉を残し、その返事を聞かぬまま杏寿郎は扉を閉めた。