第10章 裁判と約束
案の定、善逸が不満を喚き散らしているが、更紗がそれを宥めている間に杏寿郎と炭治郎は話しを進める。
「寝ているとは?鬼も睡眠をとるのか?」
「他は分かりませんが、禰豆子は人の血肉を取らない代わりに睡眠で回復しているようなんです。酷い怪我をした時は特に眠りが長くて……まだ寝ていると思うので、今会いに行ってもらっても寝顔しか見れないですよ」
そう言う炭治郎の顔は酷く沈んでおり、目を覚まさない禰豆子が心配なのだと一目で分かる。
炭治郎に申し訳ないと思いつつ、杏寿郎は特異な鬼に興味が沸いた。
稀血を前にしても強靭な精神で自我を保ち、3名の人間の命によって守られる鬼の少女を、もう一度この目で確かめたいと思った。
このような自身の興味を満たしたい気持ちも強いが、何より更紗はあの裁判でそれこそ命懸けで禰豆子を守るため、必死で考え行動し……結果、守りぬいたのだ。
それ程までに気にかけている禰豆子を、寝ているとはいえ更紗に様子を見せて安心させてやりたいという気持ちが杏寿郎の興味を上回った。
「それでも構わない。更紗が気にかけているので寝顔でも見せてやりたい。部屋を教えてくれるか?」