第3章 出会い
瞬間的に更紗は頷く。
「もちろんです!それは……鬼が罪のない人を襲う事が悪いと思います」
自分の言った言葉にハッとした。
そうだ、杏寿郎はそういう事を伝えたかったのだと。
(私は自分自身に対して、そういう事をしていたんですね)
杏寿郎が更紗の心中を察したように頷く。
「他者を思いやる気持ちは果てしなく尊いものだ、その気持ちは大切にしなさい。でも、その気持ちを少しずつでも更紗自身に分けてやってくれ。でないと途中で心身共に疲れ果てて立ち上がれなくなるぞ」
「分かりました。少しずつ自分を思いやれるように努力します」
素直な更紗の発言に癒されている杏寿郎に、更紗は追い打ちをかけるかのようにニコッと笑った。
「杏寿郎さんは春の太陽みたいです。お話ししていると、こう、なんと言いますか……心の中がポカポカしてくるんです。心地よい陽だまりに包まれているような気持ちになります」
世間から長い時間隔離されていた弊害……影響か、無意識に普通の人間ならば恥ずかしくて言えない言葉を簡単に言ってのける。
「更紗……君の発言は心臓に悪い……あ、いや、そんな泣きそうな顔になるな!悪い意味ではなく……その、うむ!実はそう言ってもらえ、照れるくらい恥ずかしいが嬉しいと言うことだ!」