第10章 裁判と約束
「なんと!溝口少年、あの猪頭も君の仲間なのか?」
未だに喚いている善逸をほっぽり出し、杏寿郎の興味はベッドに寝そべる猪頭へと移った。
そんな杏寿郎に炭治郎は苦笑いしながらも、きちんと猪頭の紹介を行う。
「彼は嘴平伊之助です。善逸も伊之助も俺の同期なので、更紗の同期でもあります。ただ、伊之助は最終選別に誰よりも早く参加して誰よりも早く帰ったから、更紗も会うのは初めてだよな?」
「初めてです。嘴平さん、はじめまして。月神更紗と申します。最終選別で1番早く帰られるなんて、お強いのですね」
……猪の被り物がモゴモゴ動いているので何かしら話しているのだろうが、善逸の喚き声が邪魔して聞こえない。
「杏寿郎君、聞き取れましたか?」
「ふむ……ヨワクテゴメンネと聞こえたが。何に対してかは分からん!何かあったのか?」
炭治郎と喚き終えた善逸は顔を見合わせ、眉を下げて伊之助を見つめる。
「那田蜘蛛山で鬼を一体も倒せなかったって落ち込んでるみたいで……伊之助がいてくれたから倒せた鬼もいるのに、ずっとこの調子で」
杏寿郎は少し考える素振りをして伊之助の前へと移動すると、布団から出ている肩をポンと励ますかのように叩いた。