第10章 裁判と約束
「ぎゃーー!誰か俺が薬飲んでるの見た?!ねぇ!誰か見たぁ?!」
廊下にまで響く聞き覚えのない声に、更紗と杏寿郎は顔を見合わせている。
もしこれをアオイが聞いたら怒り出しそうな声だ。
「ふむ、元気な事はいい事だ!さぁ、中へ入ろう」
「え、あ、はい!失礼します」
ここは一応病院のような役割を果たしており大声は全く良くないのだが、杏寿郎が気にしていないので更紗は部屋の扉を開いて中へと足を踏み入れた。
「炭治郎さん!お怪我の具合はどうですか?」
更紗と杏寿郎の突然の来訪に部屋の中が静まり返ったが、すぐに炭治郎はベッドの上に上体を起こして満面の笑みとなった。
「お見舞いに来てくれたのか?ありがとう!えっと、隣りの人はもしかして……」
おずおずと尋ねられるも、やはり杏寿郎は明後日の方向を見ながら自己紹介をする。
「煉獄杏寿郎だ!溝口少年は知っていると思うが、炎柱を務めている」
炭治郎以外にあと2人この部屋にいるが、その内の1人がビクリと体を震わせる。
その1人の姿を確認して、更紗は目を丸くした。
最終選別の際に助けてくれた、黄色い髪の少年だったからだ。