第10章 裁判と約束
一方、その頃の更紗は窮地に立たされていた。
「おい、鈴村!なんでお前は月神さんへの着替えが許されるのに俺は許されない?!絶対にこっちのが似合う!」
「はぁ?!それは前田が変な隊服送るからでしょ!私は月神さんに似合う真っ当な着物や隊服を用意してるんですぅ!!こっち来んなゲス、向こう行けゲスメガネ!しかもその手の服は何よ?」
と言った具合に前田から更紗を守ろうと鈴村が奮闘しているのだ。
しかも前田の手には、もはや隊服なのか疑問が湧くほどの際どい服が握られている。
更紗としても、是非とも着る事はごめんこうむりたいのだろう、顔を青くして首を左右に振って拒否を示している。
「前田さん、さすがにその隊服は……師範の不興を買うかと」
「俺がどうかしたか?」
杏寿郎が迎えに到着してしまった。
前田が手に持った服を背に隠すが余計怪しいだけだ。
「あの、師範。これはまだ未遂でして」
「庇う必要ないよ!性懲りも無く変な服用意してたゲスなんて!」
とりあえず杏寿郎は更紗の手を引いて自分に寄せ、鈴村に対して笑顔を向けた。
「よくぞ更紗を守ってくれた!昨日の着物や化粧も更紗によく似合っていて驚いた。これからも更紗の隊服の調整など、鈴村少女に願いたい」