第10章 裁判と約束

しのぶの表情を見る限り、本当にそう思っているのだろう。
柱である杏寿郎が向かうならば心配ないと言われるのは頷けるが、更紗もそこに含まれていると思うと師範として喜ばしい事である。

「更紗も日々努力を惜しまず成長しているからな！ところで、溝口少年を預かったがどうするのだ？継子の枠を増やすと言っていたがそういう訳ではあるまい？」

ここで会ったのも何かの縁だと思い、杏寿郎はしのぶに炭治郎を継子にする意思があるのかを確認する。
もししのぶが先に目を付けたのであれば、力尽くで引き抜くわけにはいかないからだ。

「何も取って食おうなんて思ってないから大丈夫ですよ（溝口ではなく竈門なのですがね）」

しのぶの心の声はもちろん杏寿郎には届かない。

ともあれ明確な答えは避けられたが、明確に言わないという事は継子にする意思はなく、別の意図があって預かったのだろう。

「それはそうだろうな！あと、胡蝶。更紗について調べてほしい事があるんだが、約束の日取りを早めてもらう事は可能か？」

「急ぎのようですね……先ほどの任務は今日ではなさそうですし、今からいらっしゃいませんか？次の任務の事もありますし、更紗ちゃんの希望していた血を媒介にする研究も早い方がいいかと思います」