第10章 裁判と約束
その表情を感じ取ったお館様は安心したように笑みを浮かべ、腰を上げた。
「更紗を最初に見つけてくれたのが杏寿郎でよかったと心から思う。婚約も無事に許可がおりたみたいだし、大切にしてあげなさい。何か私に出来ることがあれば相談してもらって構わないからね。では、また次の柱合会議で」
「はい、お館様も息災でおられますよう」
「杏寿郎も元気で」
そう言って幼子に伴われて部屋の奥へ下がっていくお館様の背中を見送り、更紗を迎えに行こうと踵を返したところに、鈴を転がしたような聞き心地の良い声に呼び止められた。
「出陣ですか?」
振り返るとそこにいたのはしのぶだった。
「胡蝶か、鬼の新しい情報が入ってな。一般剣士への犠牲も出始めている。放ってはおけまい」
「十二鬼月でしょうか?」
お館様が杏寿郎に直接任務を言い渡すという事は、先ほど自身もそう思った通りそうなのだろう。
「恐らくな、上弦の鬼かもしれん。お館様には俺の為にも更紗も必ず同行させるようにと言われた。真意は分からんが、俺を含め負傷者が多く出る任務なのだろう」
「まぁ、更紗ちゃんもですか?それは少し心配ですが、お2人が向かわれるなら大丈夫でしょう」