第10章 裁判と約束
翌朝、存分に更紗から癒しを補充した杏寿郎は1人お館様の屋敷の庭でお館様を待っていた。
更紗は裁縫係の鈴村へ着物を返しに行くとのことで途中で別れたが、恐らくまた鈴村に遊ばれているだろう。
困惑しながらも断り切れず、もみくちゃにされているであろう姿が思い浮かび思わず笑みが零れたところで、いつも通り幼子に手を引かれお館様が姿を現した。
「杏寿郎、連日赴いてもらって悪いね。今日は挨拶は構わないから、このまま話を進めようか」
さすがに昨日、互いの息災を確認したので挨拶は省かれたが、杏寿郎は跪き敬意を示すことは忘れない。
「いえ、お館様にお声を掛けていただきましたらすぐに馳せ参じます。して、お呼びいただいた理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ありがとう。今日来てもらった理由は3つ。1つは任務について。定期的に走る汽車で、多くの人が行方不明になっている。先日、子供たちを派遣したのだけど、その子たちも行方が分からなくなってしまったんだ。それの原因究明と解決を君に任せたい」
お館様直々の任務の依頼という事は、ほぼ間違いなく鬼が関わっている案件なのだろう。
しかも柱を派遣させるとなると、ただの鬼ではなく十二鬼月の可能性が高い。