第10章 裁判と約束
しばらくその声と柔らかな唇の感触を堪能し、更紗の体が崩れ落ちる寸前で解放する。
小さな唇を彩っていた紅はすっかり薄まり元の桜色へと戻っているが、頬は官能的なほどに赤く染まっていた。
細められた赫い瞳は薄っすらと涙が滲んでおり、杏寿郎の顔が思わず緩む。
「更紗は綺麗になろうとも愛らしいな。いつまでも変わらずいてくれると嬉しいが、婚姻後の行為に君が耐えられるのか心配になるな」
更紗はその行為とやらを思い浮かべてしまったのか更に顔を赤くしたが、何か決意したように目元をキリッとさせて杏寿郎を見つめた。
「恥ずかしいとは思いますが、杏寿郎君と肌を重ねることは心地よくとても好きです。嬉しいと感じる事はあっても、耐えるなど絶対にありえません!」
あまりに自信満々に更紗が主張するので、それが事実かどうかはさておき杏寿郎の胸は幸せな温かさで満たされる。
「そうか!俺も君と肌を合わせるのは心地よくて好きだ!さっそく今夜、そうさせてもらえないか?」
溌溂な表情から突如妖艶なものへと一変し、更紗の治まりつつあった頬の赤みが舞い戻ってきた。
それでも杏寿郎の申し出が嬉しいのか、笑顔で頷く。