第10章 裁判と約束
思いもよらぬ人物から白羽の矢を立てられた更紗は隣りから強い視線を感じてチラリと視線を動かすと、キラキラと期待のこもった眼差しを炭治郎に向けられていた。
「はい!そうさせてもらいます!よろしくな、更紗!」
自分にそんな大それたことが出来るとは思えないが、頼まれると断れない質である更紗はどうにか笑顔で小さく頷いた。
「さぁ、炭治郎と更紗の話はこれで終わりにしよう。半刻後から柱合会議を始めるからそれまで皆は少し休息をとっておいで。あ、更紗、先程の続きだけどあまり謙遜し過ぎずに、無理せず今まで通り頑張っていきなさい」
「はい、ありがとうございます」
こうして緊張の連続だった時間がようやく終わりを迎え更紗がホッと胸をなでおろすと、しのぶの明るい声が庭に響いた。
「では竈門炭治郎君は私の屋敷で預かります!隠の方、よろしくお願いします」
物凄く可愛らしい笑顔で発せられた声を合図にどこからともなく2人の隠が走り出てきて、あれよあれよという間に炭治郎と禰豆子の入った木箱を抱えて庭を駆けていく。
姿が見えなくなる寸前、炭治郎が笑顔で更紗へ手を振った。
「更紗ー元気でなー!今度会う時は名前で呼んでくれ!あと、禰豆子の事ありがとう!」
「はい!炭治郎さんと禰豆子さんもお元気で!」
言い終わる頃には炭治郎の姿は庭から消えていたがどうにか声だけでも届き、更紗は嬉しそうにしばらくの間、炭治郎が去っていった方を見ていた。