第10章 裁判と約束
「君の成長は皆が知るところだよ。まずは顔を上げようか」
少し笑いながら促すお館様の声に顔を上げると、全員のキョトンとした顔が目に入る。
(何か変な事を言ったでしょうか?)
内心ハラハラしつつ更紗がお館様へと視線を移すと、穏やかな笑顔を向けてくれていた。
「更紗は鬼殺隊に入って僅か数ヶ月で下弦の鬼の討伐と、丙までの昇格を成し遂げている。あまり謙遜し過ぎず……」
「下弦の鬼?!丙?!」
お館様の言葉を遮って隣りの炭治郎から驚きの声が上がり更紗がそれに答える前に、炭治郎の頬やこめかみへ物凄い勢いの小石がぶつかった。
慌てて飛んできた方へ視線を向けると、基本的に感情をあらわにしない無一郎が珍しく苛立ちを滲ませて炭治郎を見ていた……右手に持った小石を握り潰しながら。
「お館様の言葉を遮ったら駄目だよ」
どうやらお館様の言葉を途中で遮った事に怒ったようだ。
だがお館様は特に気にしておらず、笑顔を向けたまま炭治郎の言葉へ返答する。
「そう。更紗は杏寿郎の継子として、他の剣士たちよりも日々厳しい鍛錬と任務をこなし、今の強さを手にした。今度話しを聞いてみてはどうかな?炭治郎の成長の糧となるはずだから」