第3章 出会い
子供目線ではあるが、辺りをしっかり見回し人がいないことを確認すると仔猫に近付く。
「もう大丈夫だからね、私がすぐに治してお母さんのところに返してあげる」
慣れない手つきで子猫の足へ手をあてがう。
そうすると朝露のような白銀の粒子が仔猫の足を覆い、みるみると怪我を治していく。
そうして完治すると、仔猫は立ち上がり母猫の方へ掛けて行った。
ひとしきり母猫に甘えると、まるで二匹がありがとうと言うように更紗へと向き直り
ニャア
と鳴いて自分たちの住処であろう場所へと去っていった。
その姿を笑顔で見送ると、更紗はその場にへたり混んだ。
まだ幼い更紗は力を上手く制御出来ず、少し大きな傷を治すといつも疲れて息切れしてしまうのだ。
「このまま帰ったら怒られちゃうから、ちょっと休憩していかなきゃ」
疲れを癒している更紗は後ろに2人の男女が忍び寄っていることに気付けない。
更紗はきちんと人がいない事を確認していた。
だがあくまで子供目線で、だ。
子供の目線では届かない所など山ほどある。
そこに人がいたとしても気付く事が不可能など、小さな子供には検討もつかないのだ。
そして一瞬後には目の前が真っ暗になり、声も出せない状態にされ、長い時間狭い場所に押し込められ、ある屋敷へと連れてこられた。