第10章 裁判と約束
実弥の挨拶に対してお館様が礼を述べるが、更紗はそれだけで頭の中がフワフワと心地よい感覚になったものの、その後に間髪なく問いかける実弥の声に現実に引き戻された。
「畏れながら、この竈門炭治郎なる鬼を連れた剣士について、ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか?」
お館様はその言葉を受け実弥から始まり炭治郎、鬼となった妹が入った木箱、そして更紗へと視線を順に巡らせ答える。
「驚かせてすまなかった。炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。そして、皆にも認めてほしいと思っている」
お館様の回答に更紗の心臓がドクンと大きく跳ねた。
(やはりお館様はご存知だったのですね。容認していたという事は、妹さん……禰豆子さんは竈門さんの証言通り2年以上も人を襲っていない……そんな事があるなんて)
1人脳内で考えを巡らせていたが腕に鋭い痛みを覚えそちらに意識を持っていかれた。
滑り込んだ時に木箱の角で切ったのだろう、思っていたよりも傷は深く血が流れ続けている。
しかしこの張り詰めた状況下で治癒も応急処置も出来るはずもないので、強く傷口を手で押さえこの場をしのぎ柱達の述べている意見に集中する。
天元、行冥、小芭内、実弥は強く禰豆子を否定し、杏寿郎、しのぶはこれから得られる情報次第、竈門兄妹と面識のある義勇はもちろん、蜜璃、無一郎は容認するといった具合に意見は分かれている。