第10章 裁判と約束
否定派の中でも実弥の鬼に対する憎悪は一際強く、続く言葉により更に更紗にその強い感情を再認識させた。
「鬼を滅してこその鬼殺隊。竈門・冨岡両名の処罰を願います」
この発言の後しばらく静寂が続いた後、お館様は傍らに控える幼子に手紙を読むように促した。
差出人は鱗滝左近次という、鬼殺隊で柱を務めていた人物からのものだった。
内容は炭治郎が柱達に訴えた内容とほぼ同じであったが、最後に読まれた内容に全員が息を呑んだ。
「もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します」
鬼となった1人の少女に3人もの命がかけられていたのだ。
しかも現水柱である義勇の命も……
(つまり……それほど稀有でこの先の鬼殺隊にとって重要な役割を担っているという事……になるのでしょうか?確か鬼は何かしら鬼舞辻無惨と繋がりを持っている可能性があると、当主の件の時に聞きましたが、この子はその繋がりを断つことが出来たの?)
更紗が考えを巡らせることが可能なほどの静寂の中で突如とした3人もの命に守られている少女の入った木箱から、カリカリと爪で引っ搔くような音と小さな呻き声が聞こえてきた。
何事だろうかと疑問に思いそちらに目を向けた瞬間に原因が分かり更紗から一気に血の気が引いた。