第10章 裁判と約束
「不死川は鬼を攻撃しているだけで隊律を冒してはいない。一般剣士である君は動かずにじっとしていなさい。俺が行く」
泣きそうな顔で今にも飛び出しそうな更紗をその場で静止させ、杏寿郎が足を踏み出した時には事は既に起こっていた。
「俺の妹を傷つける奴は柱だろうがなんだろうが許さない!」
炭治郎が実弥の前に走り寄り睨みつけるが、実弥は一切怯む様子はない。
それどころか笑いながら更に日輪刀を深く突き刺し、勢いよくそれを抜き取る。
「そうか、それはよかったなァ!!」
日輪刀についた血を実弥が振り払うと炭治郎は勢いよく走り出した。
「やめろ!もうじきお館様がいらっしゃるぞ!」
今まで無言を貫いていた義勇の大きな声に一瞬実弥が動きを止めると、炭治郎は跳躍しそのままの勢いで実弥に頭突きをくらわせた。
(箱が!!)
頭突きをくらった反動で実弥の手から解放された箱が宙を舞う。
それを目にした瞬間、更紗は杏寿郎に止められていたことも忘れてその箱の元へ全力で駆け寄り、地面に落ちる寸前に滑り込むかたちで腕で抱きとめた。
滑り込んだ影響で袖が捲り上がり腕に傷を負ったが、箱は日輪刀で開けられた穴以外の損傷は免れた。