第10章 裁判と約束
身内ならば庇って当然であるし、これからも人を襲わないと言う保証はどこにもない。
(ですが、こちらも襲うという証明が出来ないのでおあいこだと思いますが……さすがにそれは言えませんね)
これを言って許されるのは、柱同士かお館様くらいだろう。
もし更紗がこの場で言えば今度こそつまみ出され、杏寿郎の顔に泥を塗ることになる。
もしそうなってしまったら恩を仇で返す事となり、更にはお館様に呼ばれたにもかかわらずその場にいないと言う状況になってしまう……
更紗にとって炭治郎を庇ってやりたいのにそれが出来ないもどかしい思いをしている間も、炭治郎は自身の言葉通りめげずに訴え続けている。
「妹が鬼になったのは2年以上前で、その間人を喰っていない!妹は俺と一緒に闘えます!鬼殺隊として人を守るために闘えるんです!」
何の証拠も根拠もない言葉。
だがあまりにも澱みのない真っ直ぐで強い確信を抱いた言葉は、その場にいた全員の反論する言葉を奪うには十分だった。
更紗も炭治郎の心からの叫びに涙が出そうになり、全身の肌が泡立った。
そんな静寂を破るかのように、最後の柱の1人である風柱の不死川実弥が姿を現した。
左手に小さな子供が縮こまれば入るくらいの木箱を携えて。