第10章 裁判と約束
皆の視線を一身に浴びる更紗本人は自身の力に戸惑いを覚えていた。
今までであれば大きな怪我を完治させるにはそれなりに時間を要していたはずなのに、明らかに1年前にあの屋敷にいた時よりも遥かに早くなっているのだ。
(これは……後で杏寿郎君としのぶさんに相談しなくてはいけませんね)
そんな事を考えている間に炭治郎の顎はもちろん、顔にあった傷もすっかり治ってしまった。
「竈門さん、終わりました。私に出来ることはここまでです……どうか頑張ってくださいね。貴方と妹さんの為に」
「ありがとう、更紗。君の優しい行動を無駄にはしない……大丈夫、俺はくじけない」
炭治郎の嬉しくも真っすぐな強い言葉に更紗は笑顔で応えると、邪魔にならないように元居た場所へと戻り、柱達と同じ目線にならないように再び正座をして成り行きを見守ることにした。
しのぶはそれを苦笑しながら確認すると、炭治郎へと改めて言葉をかける。
「では竈門炭治郎君。鬼殺隊でありながら、なぜ鬼となった妹を連れているのか……お話ししてください」
「俺の妹は鬼になりましたが、人を喰ったことはないんです!今までもこれからも、人を傷付けることは絶対にしません!」
こうしてようやく裁判が始まったが、今発せられた炭治郎の言葉を信じる柱は1人たりともいない。