第10章 裁判と約束
未だに小芭内の恨み言は続いているが、それに反論することなく義勇はただ離れた場所で静かに佇んでいる。
このままでは埒が明かないと思ったのか、しのぶは小さくため息をついて炭治郎へ視線を戻した。
「まぁいいじゃないですか。大人しくこうしてここにいてくれてますし。処罰は後で考えるとして、せっかく更紗ちゃんがこの子の話しを聞きやすい状況を作ってくれたんです。お話ししてもらいましょう」
しのぶに促され炭治郎は話そうと口を開いたものの顎を損傷しているのか激しくむせかえってしまった。
その様子を見てしのぶが水の入っているであろう瓢箪を差し出したのを更紗が制止させた。
「よろしければ私に治させてください。私が竈門さんのお話を皆さんに聞いていただきたいと願いましたし、竈門さんはすでに私の力の事を知っていますので」
「一般剣士には更紗の力の事は広めないとお館様も最終選別後に……よもや最終選別で溝口少年の傷を治したのではあるまいな?あれほど慎重にと言い聞かせていたはずだが」
自ら叱られる話題を投入してしまった更紗は、すぐ近くで怪訝な眼差しを向ける杏寿郎から目を逸らした。
「あ、いえ……それはその……それより治癒が先です!皆様、前を失礼致します!」