第10章 裁判と約束
次々と炭治郎の話しを聞こうとしてくれる柱達へ、更紗は感謝の念が沸いてきてもう一度頭を深く下げた。
「皆様、私のような身分の者の声に耳を傾けていただき、誠にありがとうございます」
「月神がここへ呼ばれたのはお館様の何かしらの意思によるものだ。私はその者の声を聞き入れただけ。礼は必要ない」
行冥はその場から動かぬままであるが、相変わらず懐の深い言葉を更紗にかける。
「僕は別にどちらでも……どうせすぐに忘れるし」
無一郎もいつも通りの無関心ぶりで、一応ながら許可をもらえた。
「そいつの話しを聞くことはいいとして、冨岡はどうするのかね?拘束もしていない様に俺は頭痛がしてくるんだが。胡蝶の話によると隊律違反は冨岡も同じだろう。そいつと鬼の妹をかばったらしいじゃないか」
小芭内にも許可はもらえたと思えば思わぬところに話が飛んでいき、更紗は思わず勢いよく義勇へと向き直った。
(冨岡様が竈門さんとその妹さんを?……それが原因で那田蜘蛛山での任務の後、お2人はピリピリされていたのでしょうか?)
任務後の杏寿郎でさえ声をかけることが憚られたのは、義勇が隊律違反である鬼を庇ったことが原因だったらしい。
杏寿郎も知らなかったのか目を丸くして義勇へ視線を送っていた。