第10章 裁判と約束
(怖い……)
そう思うと自然と体に力が入り呼吸も浅くなってくる。
杏寿郎に限って手を出すことはないだろうが、柱への不敬で摘み出されるかもしれない等嫌な事ばかりが更紗の頭をよぎる。
そんな更紗の背にソッと温かい手が添えられた。
「そんなに怯える必要はない!誰も怒っていないし、宇髄に限っては笑いを堪えているだけだ!顔を上げなさい」
思いもよらない杏寿郎の穏やかな声音に驚きながらも恐る恐ると顔を上げる。
一番に視界に飛び込んできたのは怒りや呆れなど一切滲ませていない、ただ優しく微笑む杏寿郎の顔。
そして次に目に入ったのは、杏寿郎の後ろを歩いてきていた満面の笑みの蜜璃だった。
「更紗ちゃん、私もそう思ってたの!でも私だけかもしれないって思うと中々言い出せなくて……代わりに言ってくれてありがとう!お館様ならきっとこの事をご存じのはずよ!」
蜜璃に促され上体を起こすと天元が軽い足取りで近付いてきた。
「相変わらず姫さんは根性あんなぁ!俺の意見は変わんねぇけど、お館様の事に関しては一理ある!皆それで黙っちまったって訳だ」
「私は初めから竈門炭治郎君のお話を聞きましょうと皆さんに言っていましたらね。更紗ちゃんのおかげで、きちんとお話が聞けそうです」