第10章 裁判と約束
(皆さん、呆れてしまったでしょうか?それとも怒ってしまったでしょうか?静けさがこんなにも怖いと思ったのは初めて……顔を上げられません)
言った事自体更紗に後悔はない。
だが今まで優しい眼差しを向けてくれていた人達の目が、今の発言で冷たいものに変わってしまっていたらと思うと体が震えてくるものだ。
まだ頭を下げているので視線を動かしたところで柱達の表情は見えないが、地面に横たわりながらこちらを見続けていたであろう炭治郎と目が合った。
その顔はくしゃりと歪み、優しさが滲み出ている瞳からはいくつもいくつも涙が零れ落ちている。
きっと炭治郎は味方のいないこの状況下で、一般剣士でありながらも話を聞いてほしいと柱達に願ってくれた事が嬉しいのだろう。
(そんな綺麗な涙を向けないでください……余計に事を荒立てたかもしれませんのに)
炭治郎の流すあまりに綺麗な涙に更紗は自分の不甲斐なさからつられて涙が出そうになる。
涙が流れないようギュッと目を瞑り身を縮こませているところへ、更紗にとって一番冷たい視線を浴びせられたくない人の脚絆がゆっくりこちらへ近付いてくる。