第10章 裁判と約束

今は逸れているが一度柱全員の視線が更紗に向けられたことにより、炭治郎の視線も自然とそちらへ向かい驚いたように目を見開いた。

「君は……更紗か？どうしてこんな所に……」

それに答えたい気持ちは山々だが今更紗は鬼殺隊の要と言える柱に許しを請いている立場なので、眉を下げて僅かに笑うだけにとどめた。

そんなやり取りをしているとしのぶから返答が返ってきた。

「構いません。言ってみてください」

いつも通りの優しい声音に胸を撫でおろしつつ、更紗は頭を垂れた。

「ありがとうございます。一般剣士という身分で不躾だと重々承知しておりますが……この件につきましてお館様も認知されていらっしゃるのではと思います。もちろん私の想像の範疇を超えませんので、一蹴されても仕方のないことだと理解しております。ですがもし僅かでも心に溜まる事があるのであれば、竈門さんのお話を聞いていただきたく存じます」

普段であれば杏寿郎然り天元然り緊張することなく他の柱とも更紗は話すことが出来る。
それでもこのような柱達の決断一つで人一人の生死が左右される場での発言は嫌でも心臓は早鐘を打ち、体温もみるみる上がるほど恐怖を感じる。