第10章 裁判と約束
杏寿郎はそう言ってくれたが、基本的に更紗と意見は正反対だ。
いくら心優しい少年だと自分が説明しても鬼となった妹と面識があるわけでもないので、人を襲っているかそうでないかは更紗とて分からないのだ。
そんな中でも妥協案を出してくれたのは更紗の気持ちを汲んだことに加え、お館様がこの件を認知しているはずだと告げたのが何より大きいだろう。
もちろん確証はないが、鬼殺隊の隊士を子供だと言うような人が人を傷付ける恐れのある鬼を野放しにしておくとは考えづらい。
「煉獄が斬れねぇなら俺が斬ってやろう!誰よりも派手な血飛沫を……あ、悪ぃ、姫さん」
つい鬼を連れた剣士、炭治郎を前に天元は声を荒立てたが人間同士の切った張ったの世界を知らない少女の存在を思い出しいきなり冷静になってしまった。
裁判の途中で自分に意識を取られては更紗もいたたまれないのか冷や汗をかいている。
その冷や汗に気付かぬふりをして意を決したように言葉を紡ぐ。
「い、いえ。あの……僭越ながらお言葉をお許しいただけますでしょうか?」
今までジッと成り行きを静観していた更紗の発言に、柱達は顔を見合わせた。