第10章 裁判と約束
だが柱という存在を認知していないような戸惑った表情である。
更紗は杏寿郎に柱と言う存在を教えてもらっていたので、鬼殺隊に入る前から知っていた。
しかし柱は本来ならばあまりお目にかかれない人達なので、一般剣士からすれば柱という者が存在するということすら知らないのかもしれない。
柱について逡巡していると更紗の耳に聞き慣れた大きな声が入ってきた。
「鬼を庇うなど明らかな隊律違反!鬼もろとも……」
杏寿郎はそこまで言って言葉を切った……キョトンと見つめる更紗の視線に気付いてしまったのだ。
(待て待て!今は柱としての意見を述べなくてはならない!しばし辛抱してくれ、更紗!)
「ざ、ざ、斬……する!」
『……』
柱達は杏寿郎が明らかに更紗に気を遣って言い淀んだ事が分かったので、突っ込むことすら出来ずにいる。
(杏寿郎君!私は気にせず述べてください!)
更紗は杏寿郎に向けて首を左右に振って懸命に意見を述べろと伝えると、どうやら意図に気付いたようで小さく頷いて仕切り直す。
「斬首する!が、胡蝶の言う通り、説明を聞くことも必要ではないだろうか!」