第9章 風柱と那田蜘蛛山
「そうか。更紗は鬼殺隊の剣士が鬼となった妹を連れていたとしたらどう感じる?」
あまりに非現実的で突拍子もない言葉に更紗の思考は一時停止するが、意味のない事を杏寿郎が質問してくることはないので、自分なりの考えを答えることにした。
「なぜ?と思いますね。隊律違反に当たりますし……ですが、鬼を連れ歩きながらも、鬼殺隊として悪鬼を滅しているのであれば理由を知りたいと思います。私が人外の力を有しているように、鬼となった妹さんにも特別な何かがあるのかもしれません。人を傷つけていないという事が前提ではありますが」
そう言って、自分より遥かに大きなものを背負っている背中をゆっくりとさする。
優しい刺激に少し毒気を抜かれたのか強張った体の力が抜けていくも、それに反して抱きすくめる腕の力は強まった。
「俺は鬼は滅するものだと思っている。鬼は罪なき人の命を奪い、悲しみと痛みを蔓延させる。君も含め、鬼によって辛い人生を強いられる人々を多く見てきたので、心の奥底で鬼に対する嫌悪感はなくならない」
「はい。その気持ちは間違いではありません。鬼殺隊の柱ともなれば、私達一般剣士よりも多くの悲しみを目にしてきたのですから。その気持ちを無理に曲げる必要はないと思います」