第9章 風柱と那田蜘蛛山
栗花落はキョトンとしていたが、隊服からコインを取り出しいきなりそれを指で弾いて手の甲で受け止め中を確認する。
ポカンとそれを眺めていると栗花落から先ほどの返事が返ってきた。
「今度会ったらお話ししよう、更紗ちゃん。私はカナヲでいいよ」
コインを投げた意味は今の更紗には理解できなかったがとりあえず返事を返してくれたので、今はそれでいいと思い笑顔で頷いた。
「はい!では私はあちらへ向かいます。お話し出来る日を楽しみにしていますね、カナヲさん!」
そう言って更紗は杏寿郎と共に、人の目から隠された場所へと移動していった。
(重傷者をあそこへ運べって指示があったけど、どうしてあの子に任せるのかな?……ううん、指示に従っていれば問題ないよね)
ほんの少し更紗に興味を抱くもすぐにその興味に蓋をして目の前の対応にいそしんでいった。
更紗達も指示された場所へ到着すると、そこに横たえられている3人の重傷者の対処を開始する。
1度に3人もの治癒を行うことは更紗自身初めてである。
しかしどの剣士も既に虫の息なので優先順位をつけていられる状況ではなく、怪我の位置を確認するとそのまま治癒を開始した。