第9章 風柱と那田蜘蛛山

神久夜の説明に目の前にいた人物へ何気なく視線を向けていた更紗だったが、一気に頭の中で今までの情景が蘇り顔に熱が帯びて真っ赤になった。

「そういう事なので大人しくこのまま待っていなさい。この剣士を無事に隠の方へ引き渡し次第、先へ進むぞ。まだ助けられる人が残っているはずだ」

「はい……かしこまりました」

そうして隠が到着し無事に圭太を引き渡して先へ急ぎつつ負傷者の捜索を開始する。
何名かの剣士を隠へ引き渡して亡くなっている者は地面に寝かせてやりながら移動していった。

暫く進むと開けた場所へ到達し、そこにはしのぶの継子である栗花落が隠へ負傷者を蝶屋敷へ運ぶよう指示を飛ばしていた。
そして更紗の姿を見つけると駆け寄って来て耳元でしのぶからの言葉を伝える。

「比較的軽傷の剣士は蝶屋敷へ搬送します。一刻を争う剣士に関しては更紗ちゃんで対応してください。と師範が言ってた」

言葉が少なく更紗はどうしたものかと悩んだが栗花落は人気のない方を指差しているので、あちらに行けという意味だと理解しその指示に従うことにした。

「あの、栗花落さん。伝言ありがとうございます。同期ですので今度ゆっくりお話ししてくださいね」