第9章 風柱と那田蜘蛛山
更紗の質問に答える前に杏寿郎はその繭のようなものに駆け寄り日輪刀でそれを斬りつけると、中から出てきたドロリとした液体を目にしたとたん顔を歪めた。
「更紗!急ぎこの繭を全て切り裂け!説明は後だ」
杏寿郎の表情、声音、液体と共に出てきた金属製の長いものを目の当たりにして、更紗はそれが何か瞬時に理解してしてしまった。
だが深く考えると体が動かなくなると判断し、杏寿郎の指示にただ従うことのみを考えた。
「はい!私で対処出来る場合はお声がけください!」
「分かった、そっちを頼むぞ」
無数にぶら下がる繭をいくら切り裂いても出てくるのはどれも先ほどの液体と同じものだ。
液体の正体は考えたくもないものなので切り裂き中を出すたびに目と鼻が刺激される。
(誰か……お願い!生きていて!)
あと数個のうちの1つを切り裂くと、今までと違い重さのあるものが中からズルリと出てきて地面へと落ちた。
急いで確認すると僅かながらそれが上下に動いているのが更紗の目に映った。
「師範!生存者がいました!私は治癒をしますので、ここの残りをお任せします!」