第9章 風柱と那田蜘蛛山
2人がいた場所から那田蜘蛛山は離れた場所ではなかったようで、存外早く到着した。
ほどなくしてしのぶと義勇も到着し、しのぶが連れている継子の少女を見て更紗は驚いた。
「最終選別の時の……」
「ん?何か言ったか?」
更紗の小さな声に杏寿郎が反応してくれたが今は一刻を争うのだと理解しているので首を左右に振った。
「いえ、後ほどお話しいたします」
「そうか?では胡蝶とその継子の栗花落少女、冨岡。今日はよろしく頼む」
(栗花落さん……覚えていらっしゃるでしょうか?)
特に何の反応も示していないので覚えているかは定かではない。
今はそれを確かめるより目の前で人員の振り分けが行われているので、気持ちを切り替えて柱達の話に集中する。
そうして山の中に入った現在、しのぶは継子と義勇は1人でという具合に二手に分かれて奥へと進み鬼の捜索と討伐へ向かった。
一方更紗と杏寿郎は奥に進みながら隠へ意識のある怪我人の受け渡しを行っていたが、怪我人よりも死者の方が多い現実に胸の中に悲しみと怒りを燻らせる。
そんな思いを抱きながら意識のない負傷者をひっそりと治癒しつつ奥へと進めていた足を止め、突然目に飛び込んできた不気味な光景に2人は息を呑んだ。
「師範、あれは何でしょうか?木から繭のようなものが……」