第9章 風柱と那田蜘蛛山
更紗と神久夜に目尻を下げた少し情けない表情を向けられた杏寿郎は、あまりにもその顔がそっくりで思わず笑いをこぼした。
「君たちは本当に似ているな!憂う事はない!ここ数か月夜通しの任務はなかったが、柱が9名揃うまで頻繁にあったのだ!君は何も心配せず、任務をこなしなさい」
嘘偽りのない声音と表情に更紗は安堵し、任務の完遂に心血を注ぐことに決めた。
「かしこまりました。鬼殺隊に入り、初めて剣士の方のお力になれる日が来たので気合を入れて頑張ります!神久夜さん、私と杏寿郎君の案内をお願いします」
胸の前で握りこぶしをつくり、食い気味に神久夜へ身を乗り出す。
杏寿郎はその姿を微笑ましく見ているが、神久夜からすればここまで身を乗り出す更紗の姿を見るのが初めてなので、目をパチパチと瞬せ興味深そう見つめ返している。
「私ニハ炎柱様と更紗サンがソックリダト思イマスガ……イエ、ナンデモアリマセン。少し急ギマス、ツイテキテ」
「キョウジュロウ、ショウジョヨ!マタセタ、カグヤトトモニアンナイヲスルノデ、オクレズツイテクルヨウニ!」
神久夜の声を遮って、杏寿郎と同じ話し方をする鎹烏が目の前に姿を現し仕切りだした。
「君は遅れてきたにもかかわらず偉く尊大だな!まぁ今は何も言うまい!案内は頼んだぞ!」
「フフッ、お2人ともよろしくお願いしますね」
鎹鴉達に導かれ、2人は那田蜘蛛山へと急いだ。