第9章 風柱と那田蜘蛛山
神久夜がそう言って頭を下げると、杏寿郎はニコッと笑って頷く。
「しのぶさんと冨岡様が向かわれているという事は、十二鬼月がその那田蜘蛛山に現れたのですか?」
「ソノヨウニ本部は判断シマシタ。マタ、剣士ニ多くの死傷者ガ出てオリマスノデ、蟲柱様はソノ対応モ任サレテオリマス。更紗サンノ今回ノ任務は、討伐ヨリモ負傷者ヘノ治癒ヲ優先シテクダサイト……指示ガ出てイマス」
その任務内容に更紗も杏寿郎も目を見開いて驚きをあらわにした。
多くの負傷者に治癒を行うということは、一般の剣士達に自らの力を見せつけることとなる。
本部の……お館様の判断ならば従うほかないが、鬼殺隊に混乱を招かないかと2人の心に不安が広がる。
「アノ、治癒ヲ行うノハ意識ノナイ剣士ノミデス。コレヲ期に体内のモノを消費シテオクヨウニトノコトデス」
「なんと!お館様はすでにご存じであったか!明日の柱合会議の際にお耳に入れようと思っていたのだがな!それならば更紗は心配せず治癒を行うといい。見張りは俺と神久夜が任されよう!」
さすが鬼殺隊を束ねる者。
お館様の情報網は天元のものを軽く上回る。
だが更紗はそちらではない方に驚きを示した。
「え?!明日が柱合会議だったのですか?……今更かもしれませんが、私の任務に付き添ってお体は辛くないですか?」