第9章 風柱と那田蜘蛛山
「ありがとうございます!私、杏寿郎君についてきて本当に良かったと心から思います!」
望んで入ったとはいえ鬼殺隊は命の遣り取りを日々強制させられる。
そこで強くなることは更なる強敵と闘うことを意味しているのだが、それを理解したうえでも無邪気に笑う少女の精神力は相当なものだ。
「それは光栄だな!俺も君が継子であることを誇らしく思っているぞ!これからも共に精進あるのみだ!」
「はい!これからもよろしくお願いします!そう言えば柱の方々の階級はどのように刻まれるのですか?甲だと一般剣士と見分けがつきませんよね?」
更紗が杏寿郎の左手へ視線を落とし疑問を投げかけると、その手が目の前まで上げられた。
「階級を示せ」
そうして浮かび上がった文字は階級ではなく
『炎』であった。
「階級ではなくそれぞれの呼吸の種類が浮かび上がるようになっている。俺は炎、宇髄ならば音という具合にな」
目の前の炎と刻まれた手を更紗は両手で握り、目をキラキラと輝かせている。
「すごいです!これは柱の皆さんの誇りですね!努力に努力を重ね、多くの人々を救ってきた証ですもの」
そんな言葉と表情に杏寿郎は眩し気に目を細めて微笑んだ。