第9章 風柱と那田蜘蛛山
あれから暫く経ち、現在更紗は杏寿郎との同行任務を早々に終わらせ、今夜世話になる藤の花の家紋の家へと足を進めていた。
「そう言えば更紗、君の階級は今どうなっている?下弦の鬼を倒し、それ以降も任務をこなしているので己から上がっていると思うのだが」
一時は棗の件や下弦の鬼の事で気持ちが乱される日々が続いていたのでそれどころではなかったが、それが落ち着いてきた頃には更紗の頭の中から階級の事など抜け落ちてしまっていた。
「すっかり忘れてしまっていました!確認します」
更紗が手の甲を目線の高さまで上げると、杏寿郎は顔を寄せて覗き込む。
それを視界の端に確認しつつ、通例の言葉を発し拳に力を入れて階級を浮かび上がらせる。
「え……丙?!杏寿郎君!丙まで一気に上がっていますよ!!」
驚き戸惑う更紗とは反対に、杏寿郎は至って冷静に頷いていた。
「そもそも十二鬼月の討伐は柱になるための条件の一つだからな!それを君は倒したのだから、それくらいの昇級も驚くことではないぞ!これは更紗の日々の努力のたまものだ、素直に喜ぶといい!」
杏寿郎は何度も頷きながら更紗の頭をワシワシと強く撫で、満足げに笑っている。
柱として自分の継子の成長が誇らしく嬉しいのだろう。