第3章 出会い
「は……い。ありがとうございます」
そう言って更紗は目をギュッと瞑ると、大粒の涙をポロポロと静かに溢れさせた。
「うむ、まだ朝も早い。眠れそうならもう一眠りしても構わないが、眠れそうにないなら着替えて居間においで。千寿郎が起きてくるまで少し話をしよう」
杏寿郎は更紗の涙を拭ってやりながら、握ったままの手に少し力を入れた。
それに応えるかのように更紗も少し握る力を強める。
「杏寿郎さんと、お話しがしたい……です」
そんな更紗の返答に杏寿郎は更に笑顔を深くした。
「そうか、では部屋の前まで送ってあげるから互いに着替えたら居間に集合だ。一緒に顔を洗ってから、茶を飲んで一息つこう」
「い、いえ!部屋まで送ってもらうなんて」
「更紗、鬼殺隊に入れば誰かに頼りたくても頼れない事なんて日常茶飯事だ。こういった日くらい、頼れる相手には頼っておかなければ倒れてしまうぞ」
遠慮が必ずしも美徳になり得るわけではないと諭され、素直に承諾する事にした。
「はい、ではよろしくお願いします」
杏寿郎は満足気に頷くと、更紗を立たせてあげ、握ったままの手を引っ張って玄関へ向かってゆっくり歩を進めた。