第9章 風柱と那田蜘蛛山
あのトンデモ母と長年連れ添った父親が、確かに1番更紗の扱いに長けていそうである。
一方でまさかそんな事を考えられているとは想像もしない更紗は、杏寿郎の顔が頭から落ちてしまわないように、微動だにせずひたすらジッと……怒られてしまった衝撃からなのか涙を浮かべながら固まっていた。
今の杏寿郎から更紗の顔を確認することは出来ないが、醸し出ている雰囲気がいつもと違うので頭から頬を離し、未だに固まっている更紗の顔を覗き込んでおおいに慌てた。
「す、すまない!強く言いすぎた!」
「違います!これはそうではなくて……フフッ、私、小さい頃に両親と引き離されてから、先程のような叱られ方をされなかったので、驚き半分喜び半分でつい涙が……報告と相談、これから心掛けますね。それで瞳の事なのですが」
壮絶な過去から叱られることにすら様々な反応を示す更紗にじわじわと庇護欲が掻き立てられ、苦笑をもらしながらフワリと優しく抱き寄せた。
「俺としては先程も言ったが、任務や鍛錬以外は存分に甘やかしてやりたい。はぁ……上手くいかないものだ!よし!では瞳のことを教えてくれ!俺の方も心の準備が出来たからな!」