第9章 風柱と那田蜘蛛山
「よもや命に関わるのか?!」
「んー……当たらずとも遠からず……といったところでしょうか?」
まさかの返答に杏寿郎は目を見開き、自分に背を向けていた更紗の体をクルリと回転させ、横向きになるようにして座らせた。
「なぜ早く言わない?手遅れになったらどうするつもりなのだ?!」
あまりの剣幕に更紗は身を縮こませ、小さな小さな声で恐る恐る答える。
「今すぐ命に関わるというわけではないかと……思っていますので……すみません」
発せられる言葉は尻すぼみにどんどん小さくなり、最後の謝罪はほとんど吐息を吐き出すかのようなものだ。
更に責めたとしても、過ぎたことはどうしようもないのが現実であり、これ以上叱ったところでただ更紗を落ち込ませるだけだと心に言い聞かせ、杏寿郎は気持ちを落ち着かせる。
「最近は君を叱ってばかりだな。俺としては甘やかしてやりたいので、報告と相談はしてくれると助かる」
今度は杏寿郎の体から力が一気に抜け落ち、更紗の頭の上に自分の頬を預けて息をついた。
(今度お義父さんにお会いした時には、トンデモ少女の扱い方法を伝授してもらわねば……)