第9章 風柱と那田蜘蛛山
「そうだろうな……少なくとも宇髄や不死川はそう予想していた。あと、心配せずとも誰の手も血に染っていない。宇髄によると奴らは忍だったらしく、その定められた決まりに基いて命を落としたので、君が落ち込む必要はない」
杏寿郎も最期を看取った訳ではないが、男達を捕縛していた3人は更紗と鬼の戦闘を見守っていたので、杏寿郎があの場を離れて幾ばくもせずに息を引き取ったのだろう。
そして更紗は杏寿郎の言葉に安堵し、肩の力を一気に抜いた。
「よかったです……皆さんに助けていただいて、更にどなたかの手を煩わせたのではと気が気でなかったので……心のつかえが取れました。はぁ……本当によかった」
脱力して立てていた膝を投げ出した更紗の姿はまるで子供のようで、杏寿郎はクスリと笑った。
「すまない、もっと早く言ってやればよかったな。それにしても些か無防備過ぎやしないか?」
「いえ、私が聞くことを先延ばしにしていただけですので」
そう言って更紗は頭を後ろに倒し杏寿郎を下から見上げる。
「今だけ無防備でいさせて下さい。すごく心地よくて、このまま眠ってしまいそうなほど心が穏やかになります」