第9章 風柱と那田蜘蛛山
杏寿郎の頼もしい言葉に更紗の表情がみるみる明るさを増していった。
「ありがとうございます!お母さんとも鬼殺隊に関わる尊い人のために力を使うと約束しましたし、道のりは長くても努力あるのみです!早速明日から……」
更紗が珍しく1人暴走しつつあるので、杏寿郎はそれを静止させるために小さな鼻をムギュっとつまむ。
「少し……いひゃいです」
「少し落ち着け。まずは炎の呼吸を得手不得手関係なく、瞬時に出せるようになる事が先決だ!多用出来ん技に頼っていては、いざと言う時に何も出来なくなるぞ!」
更紗が小さく何度も頷いたのを確認したところで、ようやく鼻を解放してやる。
「失礼しました……治癒以外でも力になれる事があるのだと思うと嬉しくてつい」
涙目で鼻をさする更紗であるが、やはり新しい力の使い道の発見が嬉しいのか笑みは消えぬままだ。
無邪気に喜ぶ更紗の表情に、親の心子知らずとはよく言ったものだと、杏寿郎は心の中で思った。
「君が暴走すると俺の寿命が縮む…… 更紗のご両親にも申し訳が立たなくなるので、くれぐれも慎重に使い所を見極めるんだ。良いな?」