第9章 風柱と那田蜘蛛山

自分でも解明できなかった事柄を、観察するだけでここまでの考えに至った杏寿郎へ更紗は感嘆のため息を漏らす。

「まぁ、仮説ではあるがな！あと更紗も知っていると思うが、技を発現した際に出る炎や水は脳が認識しているだけで、実際にそれらが出ているわけではない。だが、君の異例の力の影響か、燃え盛る炎が未知の領域の霧に覆われることにより、紫の炎は爆発的な攻撃力を叩き出している。鬼狩りにはかなり有益な力この上ないに違いないが……」

杏寿郎の声音、表情に影が落ちる。
その理由は聞かなくても、更紗には先程の説明で嫌でも理解出来るので問うことはせず、熱くも心優しい青年へと笑顔を向ける。

「心配なさらないでください。無理はしないと杏寿郎君やしのぶさん、お館様とお約束していますので無闇矢鱈とは使用しません。ですが、鬼狩りを行っていく上で有益な力ならば、炎の呼吸を軸としながら新しい呼吸を編み出していきたいです」

加減をしながらの新しい呼吸の習得は容易ではないだろうが、継子のこうまでも強い意志に、柱である杏寿郎は道を示し導いてやらなければならない。

「分かった！様々な違いがあるとはいえ炎に違いはない！出来うる限り俺も力になるぞ！」