第9章 風柱と那田蜘蛛山
苛立ちをあらわにする当主へ、更紗は隙を作らず強い眼差しを向ける。
「私は私を守る術、誰かを守る術を与えていただきました。その恩に酬いる為にも、ここで貴方を倒します。炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!」
この場で1番自らが不得手とする技を選ぶが、その刀から現れたのは紛れもなく紫の炎と共に燃え盛る猛虎だった。
突然の高威力の攻撃に反応が遅れるも、そこは曲がりなしにも下弦の鬼。
咄嗟に鎖を自分の前に移動させ、どうにかそれを防ぐ。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」
体制を崩した当主の隙を見逃さず、更紗はすかさず間合いを詰めて攻撃を仕掛け、胸元に深い刀傷を見舞った。
しかし勢いに押されたように仰け反っただけで、傷も徐々に回復してしまう。
今度こそ頸をと日輪刀を振り下ろすが、当主は両手で鎖を持ちそれを防いで鍔迫り合いのようになった。
「こうしてる間にもお前の体力は削られる。いつになったら倒せるだろうな?そして、鎖が1本だけだと思うなよ」
更紗はその言葉に辺りを警戒するがすでに遅く、下から鎖が飛び出して来て顎に直撃。
その場から体が後方へと弾け飛んだが、鍛錬で何度も体に叩き込まれた受け身をとり体勢を崩すことなく地面へ着地する。