第9章 風柱と那田蜘蛛山
銀色の髪をたなびかせ挑発的な笑顔で顔を満たし、何度も左右に刀を薙いで辺りにチラチラと紫の色をチラつかせながら幾重にも炎の残像を残す。
その姿は美しくもさながら夜叉のようで、杏寿郎の目を奪い恐れをなすどころか胸を高鳴らせた。
(これは凄い!あれが不死川が言っていた紫の炎か!!成長させるとどうなるか楽しみだ!)
初めて目にする紫の炎に胸の中にあった不安は吹き飛んでいたが、すぐにそれは舞い戻ってきた。
更紗の体はまるで左腕を何かに掴まれたようにグラつき足が地面に着く。
「更紗!」
「大丈夫です!見ていてください!」
助太刀しようと杏寿郎が1歩足を踏み出したところを、笑みを崩さぬままの更紗にそれを止められる。
「いい加減……姿を現して!!」
そう言ってまるでそこに縄でもあるかのように左腕へと巻き付ける動作をし、両足が地面にめり込むほど踏ん張りそれを懇親の力で引っ張りあげる。
しばらくの間力は均衡していたが、先に音を上げたのは人外の鬼。
徐々に更紗の腕に巻きついていた物が形をあらわにされ、それに伴って建物の影から黒い人の形をしたものがズルリと引きずり出され、地面へと這い蹲らせた。