第9章 風柱と那田蜘蛛山
「はい!ありがとうございます!」
戦力外通告からの任せて貰えた現実に更紗は頬が緩みそうになるが、自分が気を緩めて勝てる相手ではないと、1度目をつむって気合いを入れ直してから杏寿郎と入れ替わるように前へ移動する。
(足と首は取られる訳にはいきません……)
更紗は以前に杏寿郎が見せてくれた構えを頭に思い浮かべ、その通りに体を動かす。
刀を右手だけで持ち地面と平行に構え後ろへ引き、左手を前へ翳して鬼が居るであろう場所を定め前傾姿勢を取る。
(よもや!よく俺の戦闘を見ているのだな!感心……だが、嫌な予感しかせんのは俺だけか?)
師範である杏寿郎は期待と不安を胸に継子である更紗を見守る。
「私はここですよ!捕まえれるのならば捕まえてみてください!」
更紗の挑発する言葉に反応したのか、鬼は攻撃を繰り出し空気を切る音が耳に届く。
それと同時に更紗は両足で地面を力一杯踏み切り、その勢いを殺さぬまま定めた場所へと舞うように切り込んで行った。
ジャラッと金属が絡まるような音が鼓膜を刺激した瞬間、更紗の顔に笑顔が零れる。