第9章 風柱と那田蜘蛛山
つまり今この場にうつ伏せで拘束されている3人の体内には毒が巡っているということだ。
しかも任務遂行時間を逆算して……となると体を蝕み始める時刻が近付いてきている。
「解毒薬を飲ませることは不可能なのか?更紗が知ってしまっては気に病む」
「気に病むのか?自分の命を狙った輩だぞ?」
あまり更紗と関わったことのない義勇は知らない。
なぜか他人に降りかかった事柄にさえ自分の責任だと胸を痛める更紗の性格を……
柱3人は顔をしかめながら、ポロポロ涙をこぼす少女の姿を思い浮かべ肩を落とす。
「あいつはそんな女だから仕方ねぇだろォ……で、お前の言い方だと解決策はないんだよなァ?」
「煉獄にも姫さんにも悪いが、不死川の言う通り俺達にも胡蝶にも助ける術はない。派手に諦めて意識取り戻して事情を知った姫さんは責任持って煉獄がなぐさめろ……姫さんの容態気になるな」
更紗が回復し合流する事を望んですらいる姿を知らない4人は一様に沈んだ表情となりながら、杏寿郎の肩に勢いよく降り立った鎹鴉の姿に視線を集中し言葉を待つ。
「更紗様ハ意識ヲ取リ戻シマシタ。合流ヲ望ンデイマス、炎柱様、師範トシテ指示ヲ願イマス」
安心したのも束の間、病み上がりにもかかわらず行動力に溢れた少女にその場の柱全員が項垂れた。